奏出愛、
クラブチッタへと続く
挑戦の記録

Report 2025winner 奏出愛

「優勝したら、クラブチッタにすべて突っ込もう」
──彼らの挑戦は、そこから始まっていた。
2025年5月、ZUBALIGHTを勝ち抜き、ZUBAFES vol.4に初出場。パフォーマンス・動員・投票の3部門すべてで1位を獲得し、完全優勝という快挙を成し遂げた奏出愛(かなであい)。
この快挙の背景には、明確な目標と揺るぎない覚悟があった。

オンリュー【音龍】、りこまお、みそたろーという3人は、それぞれソロ活動を行う中で集まったユニット。
家庭や仕事、子育てと並行しながら、限られた時間のなかで「夢を現実にするにはどうすればいいか」を常に考えていた。
そして彼らが出した答えは、「まずやると決める」こと。
夢を掲げるだけではなく、現実に向けて踏み出す。そのための原動力がZUBAFESだった。

優勝賞金50万円を手にした彼らは、同年7月1日、川崎クラブチッタでのワンマンライブという一大舞台を満席の観客と感動のステージで大成功を収めた。

だが、そこに至るまでの道のりは、ただ夢を語るだけでは叶わない“リアル”の連続だった。

「クラブチッタ、やろう」
最初にそう口にしたのは、みそたろーだった。
「えー……CLUB CITTA’とか、会場が大き過ぎる。。。無理でしょ(笑)」
オンリュー【音龍】とりこまおは最初、やや戸惑い気味だったという。

みそたろーとしては、「じゃあ俺ひとりでやるわ」くらいに思っていたそうだが、本人もそれが現実的ではないことはわかっていた。
しばらく時間をおいて、オンリュー【音龍】が改めて「クラブチッタ、やろう」と口にしたとき、空気が変わった。
家庭を支え、子育てと両立しながら活動するりこまおにとって、この挑戦には現実的な“お金”の壁があった。集客の不安もあった。
それでも、2人からの「俺たちがなんとかする!とにかくついてきて!」という言葉に背中を押され、覚悟を決めたという。

クラブチッタ開催が決まってからは、全て自分たちで用意しなければならず、忙しさのあまりぶつかることもあった。
だが、目標に向かう過程で、時には激しくぶつかり合いながらも、彼らは次第に“本当の意味でのバンド”へと変わっていった。
それぞれがソロ活動をしていたこともあり、当初はどこかに「これはソロのためのユニット」という冷めた距離感があったのかもしれない。
それが今では、「あのときは間違ってた、ごめん」と涙ながらに互いへ伝えられる
──そんな揺るぎない絆へと変わっていた。

そんな準備の最中、オンリュー【音龍】がふと口にした。
「ZUBAFES、今年の優勝賞金、50万らしいよ」
「じゃあ、それ取ってクラブチッタの資金にしよう!」
そこから、ZUBALIGHT(ズバライト)を経てZUBAFES本選へ──。
クラブチッタ成功という明確なビジョンのもと、彼らはZUBAFES出場を選択した。

結成からまだ2年足らず。
オンリュー【音龍】、りこまお、みそたろーという個性の強い3人が、それぞれのソロ活動をベースに集まり生まれたユニット「奏出愛」。
オンリュー【音龍】はZUBAFES vol.3に、みそたろーはvol.2にそれぞれソロで出場した経験がある。
ライブ配信でファンと向き合い、子育てと両立し、音楽を生業としながら、自分の生活をそれぞれが背負っている3人。
だからこそ、目標が定まれば、動き出しは早かった。
ZUBAFESで優勝したことで、ほんの少し“心の余裕”が生まれたと彼らは語る。
経済的な安心感があったからこそ、クラブチッタのライブ制作に集中できた。
それがステージ全体のクオリティにもつながり、「パフォーマンスに没頭できたのは、本当にありがたかった」と話す。

クラブチッタのレンタル料、人件費、機材費、広報費……
賞金50万円は決して十分ではなかった。
だが彼らは迷わなかった。
クラファンを立ち上げ、チラシを配り、SNSでの発信や直接の声かけを重ねた。
その姿に、私は「これは単なるライブじゃない、人生を賭けてるな」と感じた。

印象的な場面がある。
リハーサル当日、演出の打ち合わせ中にスモークマシンの話題が出た。
レンタル費用は1万2000円。安くはないが、演出全体を考えれば“必須”とも言える。
3人は一瞬、目を見合わせた。

「どうする? やる?」

「……やろう」

即決ではなかった。

だが、迷った末に「やる」と決めたその瞬間に、彼らの背中に“プロ”の影が見えた。
お金の使い方、責任の取り方
──小さな判断の一つひとつが、次のステージに繋がっていくのだと思った。

クラブチッタ当日。来場371名。
配信視聴を含めれば、総勢500名以上が彼らのステージを見守った。

冒頭からステージを彩っていたのは、色とりどりの演出と客席の熱気、そして3人の表情だ。
テアトルアカデミーのキャストたちが加わることで、楽曲の世界がさらに広がっていった。
ボーカルとしての個性も、三者三様に際立っていた。

オンリュー【音龍】の歌声は、ハスキーで男性的な印象を持ちながらも、その中に繊細な優しさが滲んで、会場全体を温かく包み込む。
みそたろーはハイトーンを得意とし、見た目には線が細そうに見えるが、実は芯のある骨太な声が響く。
小柄な体から放たれる力強さが、前向きなエネルギーとして伝わってくる。
りこまおは、母としての包容力と女性らしい柔らかさを併せ持ち、凛とした歌声を響かせる。
その一方で、トランペットを手にすれば、天高く突き上げるような音で空気を一変させる。

そしてこのライブには、もう一人の「奏出愛」とも呼ぶべき存在がいた。

松岡詩恩

演出・構成・ディレクションを担い、ギター/アコースティックギターを駆使してステージ全体を支えたバンドマスターだ。
ステージの流れ、照明の指示、演出の細部に至るまでを緻密に設計。
アーティストの魅力を最大限に引き出す“職人”として、彼の存在はこの公演の成功に不可欠だった。

さらに、彼を支えたサポートメンバーたちも、それぞれが高い実力を持ち、奏出愛の音楽に命を吹き込んでくれた。

Keyboard:Reymiy(れーみ)
Bass:根本陽一郎
Drums:田中”TK”康太郎
Violin:愛しのシェリー

ライブ後、彼らが口を揃えて語ったのは「やり切った」という実感と、「もっと上を目指したい」という意志だった。
「全国6都市ツアー」「感謝祭」「家族や支えてくれた人への恩返し」そして何より、ZUBAFESで優勝したことによって得た“心の余裕”。
経済的な安心感があったからこそ、目の前の観客とまっすぐに向き合えた
──そう彼らは語っていた。

夢は、ただ待っているだけでは叶わない。
具体的に描き、行動し、掴みにいくものだ。
彼らのように、「クラブチッタでやる」と最初に“決めて”しまうことで、道が浮かび上がってくる。
ZUBAFESは“競う場”でありながら、“叶える場”でもある。
50万円の賞金は、夢の象徴ではなく、夢を現実に引き寄せる「土台」だった。
物事を成すとき、「無理だ」と思った瞬間に、すべては止まる。
でも、「できる」「やる」と決めて、まず一歩を踏み出すと、不思議と道は開けていく。

ZUBAFESは
──そんなアーティストの背中を、これからも押し続けたい。

“愛を奏でる”と書いて奏出愛。
だが、彼らの音楽は愛だけではない。苦悩も、覚悟も、感謝も、全部混ざっている。
あの日、クラブチッタで見た景色を、私はきっと忘れない。
そして、ZUBAFESはこれからも
──こういうアーティストたちを、全力で応援していきたい。
2026年のZUBAFESでも又新たな★と出会えることが楽しみで仕方がない。